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THE SOARAでは人間本来の治癒能力を向上させる

2015.02.28 | インタビュー
渥美 和彦 先生

長崎・ハウステンボス内に、未来のクリニックを予見させる新たな施設、ヘルスケアリゾート THE SOARA が2012年1月29日にオープンいたしました。
当センターでは日本のみならず世界各国の相補・代替医療の要素を織り込み、バラエティー豊かなメニューを取り揃えております。
グランドオープンにあたり、監修の(社)日本統合医療学会理事長、東京大学名誉教授・渥美和彦先生より、「統合医療」の理念と将来性、そして THE SOARA に秘められた大きな可能性についてお話を伺いました。

THE SOARA を支える、「統合医療」の理念とは?

「統合医療」の考え方は米国発といってよいかと思います。アリゾナ大学のアンドリュー・ワイル博士が、「代替医療と近代西洋医学とを一緒に行なっていこう」と提案なさったことが発端です。
当時、西海岸ではベトナム戦争に対する反省といった背景があり「近代科学は本当に役立つのか?」といった視点から環境問題など科学技術に対する多くの反省が出ました。
医学においても「近代西洋医学はこれでいいのか?」という流れから、その対極にあったアーユルヴェーダ、ヨーガ、ユナニなどの伝統医学、カイロプラクティック、アロマセラピーなど様々な相補・代替医療(CAM)と呼ばれる療法の見直しが進んだ訳です。しかし、やはり近代西洋医学と統合していかなければ真の意味で患者に役に立たないということから「統合医療」という形に発展し、現在に至っています。

現代の病気はストレスからくることがほとんどです。ストレスを受けた時にストレスと感じないままその状態が自分だと思い込んでしまい、ストレスが積みかなり、気づいた時にはいよいよ自分では処置できないところまで進んでしまっている。そして、病院へ行かなければならなくなるのです。
ストレスが原因で疾患として出てくるものを『心身症』といわれています。外科的な怪我や故障以外、内科的な病気のほとんどは、こころの在り方が原因で不調が現れるとされる『心身症』です。そして、『心身症』になりやすい人はいまの自分に気づいていないのです。

近代西洋医学は科学に根差しているため、評価は厳格で、比較も容易です。伝統医学、相補・代替医療(CAM)については、現時点では科学的な解明のつかないものもありますが、その安全性と有効性が実証できれば無視することなく、どのように使えるのかを考えます。ある程度、科学的に立証されたデータの無いものはできるだけ使わないという方針です。現在は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)などが研究開発し、様々な報告を出していますので、それを参考にしながら実際に利用可能なものを使っています。

マスメディアにおいては「統合医療」という言葉だけが先行している嫌いがありますが、人によって「統合医療」の捉え方が随分違うと思います。健康食品と共に普通の医療を行えばそれが「統合医療」、あるいは、漢方を使えば「統合医療」と考える人もいます。実際のところ、「統合医療」とは非常に幅が広く、しかもその内容は日々発展していますので、あまり小さく捉えないほうがいいと私は思っております。

「統合医療」の定義

「統合医療」には、いくつかの定義があります。

1.「患者中心の医療」

不思議に思われるかもしれませんが、今までの医療はどちらかというと医者中心、政府中心といった医療が多かったわけです。しかし、これからは患者中心の医療になっていくことでしょう。
こうなりますと軸が変わるため、問題も出てきます。個人毎に同一の治療法や薬に対する反応が違うわけですから、何千というデータを集め、平均をとる従来の方法ではなく、『個々についてどのような方法が最適なのか』といったあたりは今後の課題です。

2.「予防」「保健」「全人的医療」

今までの近代西洋医学は治療の医学でした。伝統医学や CAM には、予防や保健を中心に考えるものも多く含まれています。そうなりますと、肉体以外にも、心の問題、家族や社会関係など社会的な問題、最後にはスピリチュアリティー、霊性の問題も入ってきます。いわゆる全人的医療ですね。「身体・人間を丸ごと見る」これが大きな特徴です。
個人を中心とした医療といいますと、今いわれているテーラーメイド・メディスンなどと通じるところもあるわけです。患者中心の全人的医療、そして治療だけでなく、予防・保健・健康も考える、このように広がってきますと、今までの医学では考えられなかった方法も各種入ってきます。
たとえば、音楽療法や芸術療法、笑うこと(笑い療法)の有用性など、かなり多岐にわたりますので、「統合医療」というのはここまで、といった範囲はなかなか規定できません。寧ろどんどん広がっている、そういった中で、いいものだけを選りすぐって患者中心の医療を行っていく、これが一番大切なことです。

「統合医療」これからの医療の主流へ

さらに、何故これから「統合医療」が医療の主流になるのか、3 つの理由をお伝えしたいと思います。

【1】東と西の文明の衝突

東というとインドと中国の文明、西というとヨーロッパの文明、西洋文明ですが、東西の価値観が衝突して新しいものが生まれ、今、新たなる価値観に置き換わろうとしています。そのため世の中が不完全で不透明で不安定で揺れ動いているわけですね。
医療も文明の大きなシンボルのひとつです。医療も東西の医学が融合・統合していく、これは千年に一度の稀にみる機会といえましょう。

【2】エコ医療

人類が地球資源を浪費した結果、食糧、水、エネルギーなどが枯渇してきました。そんな中、地球・自然環境を長生きさせるためのエコ概念が進んできましたが、エコ医療もそのひとつです。燃料や電気といったエネルギーを大量に使ったり、多くの技術を用いる重い医療からエコ医療へ、これも今後大きな流れになってきます。

【3】セルフケアの時代へ

今後、自分自身で自らの健康を守る時代に入っていきます。しかし、個人が個人を守るのは難しいことで、教育や制度を変えるなど様々なことが必要になっていますが、ここにも「統合医療」は関係しています。
たとえば、ヨーガによるセルフケア、鍼は自分では刺せなくてもツボを押さえることで疲れが取れる等、色々な方法が CAM の中には利用できるものがありますし、それらを活用してセルフケアできるわけです。

以上を併せ考えますと、「統合医療」というのは誰かが反対しても、そういった方向へ行かざるを得ない。これが、私が日頃お伝えしている「統合医療の必然性」なのです。

THE SOARA 今までにない新たなポジション

「健康で長生きする」これが、これから世界共通の価値観になっていきます。

今までのように、大学でどんな研究を行うかといった要素も必要ですが、予防や健康については病院やクリニックでは出来ないものも出てきます。
たとえば、がん患者の予後のケアをどうするか、がん予防ケアはどうしたらよいか等、健康を守っていく場として地域医療も大変重要な存在です。

このような背景のもと、THE SOARA は新たな試みのひとつといえましょう。そして世の中に「統合医療」の新しい情報を発信していく重要な存在になるのではないでしょうか。

この施設では、医師の監修の下、アーユルヴェーダ、ヨーガ、温熱浴療法、鍼、アロマテラピー、瞑想や座禅などの伝統医学や CAM を取り入れながら、心身を癒し、健康を維持するための様々なケアを展開しております。

統合医療の一番重要なポイントは「体に備わっている自然治癒力を活性化し、病気にならないように予防する、健康を保つ」ことです。
統合医療が担わなければならない幅広い領域の中、医療機関にしか対応できない部分と棲み分けるかたちで、THE SOARA の存在意義がクレーズアップされてくると思います。

この度の THE SOARA は、皆様の健康を保つ新たな試みの場として、そして情報発信地としても絶好の場になると私は考えております。

渥美 和彦 先生

(社) 日本統合医療学会名誉理事長
東京大学名誉教授