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内臓脂肪も減る夢のスポーツで健康に!

2015.08.27 | インタビュー
藤田 和樹先生
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THE SOARAでのオープン当初からプログラムとして提供しているノルディックウォーキング。じわじわと人気がでてきて、都心でもポールを持って歩く人を見かけたこともある方も多いのではないでしょうか。今回は、このノルディックウォーキングを日本に紹介し、みなさんの健康づくりに寄与されている大阪大学 藤田和樹先生にその歴史や、魅力についてのお話をお聞きしました。スペシャルインタビュー、2回にわたりお届けします。

日本にノルディックウォーキングがやってきた!

2004年、仙台市、東北福祉大学、東北電力などをメンバーとする産学官共同事業体である「仙台ウェルネス・コンソーシアム(SWC)」が経産省の健康サービス産業創出支援事業に採択され、仙台市に「フィンランド型」予防福祉・健康増進サービスを導入するプロジェクトがスタートしました。
このプロジェクトの研究員として、当時、東北福祉大学予防福祉健康増進センターで中高年者の健康増進運動のプログラム開発を担当されていた藤田先生に白羽の矢が立ったのでした。

仙台市とフィンランドは福祉分野で協定を結んでおり、活発な国際交流が行われています。藤田先生は、SWCの研究員として、フィンランドのスポーツ・運動を仙台に導入するため何度も現地に視察に行かれたそうです。

フィンランドにはピッチャーのいない野球(フィンランドベースボール)などちょっと変わったスポーツが結構あるそうで、その中でも、雪のない季節にスキーで使うようなポールを持って野山や公園を歩くノルディックウォーキングは、

「初めて見たときからこれは東北でもはやりそう!」

と直感的に思ったそうです。

ウォーキングは誰でも手軽にできる健康づくりスポーツとして中高年者層を中心に広く普及していますが、一般的に、健康づくりのためには最大酸素摂取量(または予備心拍数)の40~60%強度で30分~1時間くらい運動を行うことが勧められています。

しかし、ウォーキングでこの強度を維持するためにはかなり速いペースで歩かなければならず、運動習慣のない方や体力不足の方ではかなりの努力が必要に。

ノルディックウォーキングは、フィンランドで誕生した2本のポールで地面を突き押しながら歩く新しい健康づくりスポーツです。ポールを使うことによって、上半身の筋肉が活発に使われるため、普通のウォーキングよりも心拍数が上昇しやすくなり、エネルギー消費量が平均20%増加!

心拍数やエネルギー消費量などの生理学的強度が増加する=運動がきつくなるにもかかわらず、ノルディックウォーキングでは本人が自覚する運動のきつさ(主観的運動強度)は変わらないかむしろ低くなる傾向があります。

つまり、ノルディックウォーキングは、精神的なストレスをあまり感じることなくエネルギー消費量を増やすことのできる<理想的な健康づくりスポーツ>と言えます。

仙台市では、2005年に水の森公園近くの市民センターでSWCによってはじめてのノルディックウォーキング体験講習会が開催されてから、わずか1年のうちに10カ所以上の市民センターでノルディックウォーキングの講習会や体験会が開催され、ノルディックウォーキングは急速に仙台市民の間に普及していきました。そして、2007年には、国際ノルディックウォーキング連盟(INWA)の公認団体として日本ノルディックフィットネス協会が仙台に設立され、ノルディックウォーキングは仙台から全国へ広がったのでした。

新アイドルグループか、万博MTBって?

「私は、万博MTBから来ました。」ノルディックウォーキングの指導者養成講座で、紳士が挨拶をしてくれました。何々、オジサマのアイドルグループの名前ですか?

「あ、万博メタボね!」
「わしら、メタボやってん」
とにこにこ笑顔の関西弁で話すオジサマ方。

「えええ~?万博でメタボ?確かにすこしフクヨカな感じも。でもスリムな方もおられるし、これはなんじゃらほい?」と頭が???となったのですが、よくよく聞くと、藤田先生がノルディックウォーキングの普及と研究のために行われたプロジェクトで、大阪の万博公園には、日本で唯一の国際ノルディックウォーキング連盟の公認コースがあり、ここで、病院でメタボ予備軍だよ~と言われた方々が週に1回ノルディックウォーキングをして、健康を取り戻していくというもの。

病院に行くと、「歩きなさい」と言われたことがある方もおられると思いますが
なかなか、歩きなさいと言われても一人で歩くのも難しく、そんな方々にノルディックウォーキングで楽しく効果的に歩く指導がされました。

内臓脂肪が減った!

この万博メタボは、文部科学省の科学研究費がついたプロジェクト。対象者は65歳以上のメタボ予備軍16名で、半年間、週に1回ノルディックウォーキングの指導を受けるというもの。
最初の1か月はポールを持たずに、姿勢を正しく歩くこと、
次の1か月はハートレートモニターで心拍数をモニタリングしながら歩き、脂肪を燃焼しやすい心拍数・運動強度をカラダに覚えさせていきます。
そして、「先生、まだポール持ってあるかんのですか?」と参加者がジリジリしてきたころ、やっとポールを持って本格的に歩き始めたそうです。

ノルディックウォーキングは、<筋力トレーニング×有酸素トレーニング>の特長を併せ持つ稀なスポーツ、と考えられます。この研究によって、ノルディックウォーキングにはメタボ予備軍の方の下肢筋力や持久力を改善するだけでなく、普通のウォーキングでは変化のなかった内臓脂肪を減らす夢のような効果のあることが実証されました。

ところで、皆さんは、

アディポネクチン

という主に脂肪細胞から分泌される蛋白質をご存知ですか?

アディポネクチンには、<血管の内側を守る効果や、動脈硬化を防ぐ効果>があります。また、インスリンの感受性を良くする効果も知られています。これまでの研究によって、ウエイトトレーニングのような高強度の運動でアディポネクチンが増加することは報告されていましたが、ウォーキングのような緩やかな運動の効果は明らかではありませんでした。

残念ながら、ノルディックウォーキングのアディポネクチンへの効果はこの研究でも、はっきりとはしませんでしたが、研究期間終了後もノルディックウォーキングを続けた方ではアディポネクチンが増加した方がかなりいらっしゃいました。

ノルディックウォーキングくらいの緩やかな運動でも、長期間行うことで動脈硬化症が予防できるかもしれない。もしそうならば、ノルディックウォーキングはシニア層や女性など健康志向の高い方たちにとって夢のスポーツと言えるのではないでしょうかと藤田先生。
今後、さらなる研究にこうご期待ですね。

藤田先生は

「食生活は変えないで、今までのままでね~」

と参加者に何度もお話をされていたそうです。しかし、ノルディックウォーキングで大股でリズムよく、いつもより早いペースで歩くことで、

結果的には「食事の行動変化が起きていたんですよ」

と。
それは、歩くことで食べ過ぎを引き起こしている<脳ストレス>が解消され、満腹中枢への刺激が少なくなり、食事への執着が減っていったと考えられます。また、玄関にいつも置いてあるノルディックポールを見て、「あ、やせなくちゃ!」とモチベーションにもなった可能性が高いそう。メタボでなくなった今も、万博MTBでノルディックウォーキングされる方々はイキイキとされているのがとても印象的でした。

藤田先生の研究には、1日の歩行時間と全死因死亡の相対危険率を調査されたものがあります。
この研究は厚生労働省など様々なところで引用されているそうでご覧になったことがある方もおられるかもしれませんが、毎日1時間以上歩いている女性の死亡率は低いことがわかっています。(下記グラフで、歩行時間が1時間以上の女性に比べて、歩行時間が30分~1時間、30分以下の女性では全死因死亡の相対危険率が24%、38%上昇)
一方、喫煙をする男性の全死因死亡率は歩行時間とは関係なく、むしろ歩行時間の長い人の方が死亡率が高いという本末転倒な結果に。

「まずはタバコをやめてから運動しましょうね」

と藤田先生。

編集便り

歩けば、変わる。

はじめてTHE SOARAでノルディックウォーキングをしたとき
たった一度で、おへその下からカラダがぐっと伸びて、胸が開き
歩き方が変わったことに驚きました。
歩くことは、どうやらカラダに良いらしいということは
ご存じの方も多いかと思いますが、スポーツ医学の専門家
藤田先生のお話には、ワクワク・ワクワク。

次回は、運動不足に対してだけではなく、
健康な人をもっと健康に、アスリートにもおススメの
ノルディックウォーキングについてお伺いします。
お楽しみに~

藤田 和樹先生

大阪大学 全学教育推進機構
スポーツ・健康教育部門 准教授
JNFA理事・教育部長 INWAナショナルコーチ
医学 障害科学博士
NPO法人日本ノルディックフィットネス協会 http://jnfa.jp/