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行動が世界を変える

2015.09.3 | インタビュー
木村慧心(けいしん)先生
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THE SOARAのオープニングワークショップをしていただいたヨーガ療法士 脇田久子先生。
多くの方が先生に魅了され、また3年がたった今も、ふとした瞬間に、先生の言葉や笑顔に癒されている方も多いのではないでしょうか。今回は、このヨーガ療法を日本に普及をされた本家本元、日本ヨーガ療法学会理事長 木村慧心先生に、ヨーガとの出会いやヨーガの魅力、そして世界で活躍するヨーガ療法士についてお話をお伺いしました。

人と話したくなかった10代

群馬県前橋市で生まれ、その後、東京教育大学理学部に進まれた木村慧心先生。
どうしてバリバリの理系畑の先生が、ヨーガの世界にと少し不思議な想いでその経緯をお伺いしました。

「いや~人間が好きじゃなかったんですよ。」

「石だと、しゃべらなくていいでしょ。」

とお茶目な笑顔で答える木村慧心先生。世界鉱物学会会長でもあった、鉱物学の第一人者、須藤俊男教授のもとで学ばれたそう。

二千名を超えるヨーガ療法士を束ね、毎年日本全国各地で開催されるヨーガ療法学会では、千数百名を前にして、楽しそうにお話をされる木村慧心先生からのその言葉に驚きです。

実は、お父様がビジネス現役中に病に倒れ、その後の大人の様を見ていると、とてもとても人とは関わりたくないと感じたそうです。時は、ちょうど学生運動の真っただ中。東大では論争が繰り広げられ、卒業論文どころでなくなっている大学をみて、学問にも失望してしまったそうです。

そんな中、寮生活では、インド哲学本を読み、その後奥様となる女性に出会い、大学の入学式も卒業式もできない状態の時代で、翌年、何もすることもなく、少し前に出会った奥様と結婚。

と何もすることがなかったから結婚したような文章になってしまいましたが、実はこの結婚がその後、木村慧心先生がヨーガと深い出会いにつながっていくのです。

Religionってどういう意味ですか?

大学4年生の1-2月には、鉱物学の須藤俊男教授から、進路はどうするの?と聞かれ、宗教の道に進みたいと答える木村慧心先生に、須藤教授はとても丁寧な話し方で「中村元さんはご存じですか?」と聞かれたそうです。

実は、須藤教授のお父様は東京大学の教授で、仏教研究の国際的な権威で、インド哲学者、文化勲章も受賞された東京大学名誉教授 中村元先生はその教え子。須藤先生と中村先生は幼馴染だそうです。
「中村さんはね、一度読んだ本は何ページに何が書いてあったか、すべて覚えているのですよ」と須藤教授。
そして、その須藤教授は、「自分も数字をみるとすべての数字が頭の中に見える」というような方で、
理学部の教授に宗教の道へ進むと話をして、話が通じるかな~と少し不安だった
木村慧心先生は、鉱物学者と宗教哲学者に通じるものを感じるのでした。

卒業後は、1年間、高校の理科の講師として教えるものの、理科は翌年も同じ内容を学生に教えるので、それがなんだかしっくりこない木村慧心先生。そんな中、先の須藤教授の許しも得て、京都大学で宗教哲学を教えていた武内義範先生の元を訪ねることになります。

宗教哲学を本格的に学びたいけれど、また大学に入り1年からやり直すのは大変と思っていると、なんと聴講生という制度もあると聞き、その試験を受けることになる木村先生。
30~40名の受験者がいた聴講生になるための試験は、辞書の持ち込みはゆるされないドイツ語の試験は音読だけはすんなりクリア、そして、英語の本を読むものだったそうです。
その中で、何度も何度も出てくるReligionという言葉に木村先生は、武内教授に

「Religionという言葉は何という意味でしょうか?」

と質問したそうです。

そう、Religionとは、<宗教>という意味の英語。
この単語の意味も解りませんでしたが、聴講生に木村慧心先生のみが合格(笑)
ヘーゲルの宗教哲学をびっちり勉強されたそうです。

京都大学で2年学び、そろそろ奥様のいる鳥取へ帰ろうとしたときに
京都大学で宗教哲学の教えをいただいた武内先生からは、

「宗教哲学の世界に入るなら、本を読まない方がいいよ。」

とのアドバイスを
いただいたそうです。

あれほどヘーゲルの本を読ませた先生がです。

北欧からインドへ

奥様のご親戚がスェーデンで結婚式をされることになり、一番、時間的に自由がきいいた
木村慧心先生が、家族の代表としてスェーデンへ。

しかし、この時、木村先生が持っていたのはスェーデンへの片道航空券。

日本へは帰らずに、陸路、インドを目指された木村慧心先生。

デンマーク、ドイツ、オーストリア、ユーゴスラビア、ギリシャ、トルコのイスタンブールを経由してバスでイラン、アフガニスタンへ。
アフガニスタンのカブールで発熱し、その後、デリーでも発熱して倒れ朦朧とする中2週間民宿でカラダを休めた木村慧心先生は、ムンバイから約3時間、列車でデカン高原を上がっていきロナワラと呼ばれる避暑地にある

カイバルヤダーマ・ヨーガ研究所へ

到着されたそうです。

1920年代にスワミ・クバラヤナンダ師が創設した

世界で一番古いヨーガの研究所

で、その附属ヨーガ大学の学生は、インド人が17人、フランス人、ポーランド人、イギリス人、そして学生ヴィザを持たない木村慧心先生はまたまた聴講生。合計20名ほどの学生たち。当時はこじんまりとした、とても小さな大学だったそうです。ここで、医療としてヨーガを活用できるヨーガ・セラピーを学んだ木村先生。この研究所は、ヨーガで病気を治していく<ヨーガ・ホスピタル>も併設されていました。
ヨーガ哲学の神髄に迫りたいと思っていた木村慧心先生は伝統的なヨーガを学びたいと思ったそう。しかし、伝統的なヨーガは行者さんに直接習うしか方法がなく、冬の寒い期間、インド北部のリシケシにさらに北部ヒマラヤから降りて来ていたスワミ・ヨーゲシヴァラナンダ大師の元に弟子入りし、そこから約10年間、半年はインドに、半年は日本にいるという生活を続けられ、90歳の時に出会った師匠は、木村慧心先生が弟子入りから10年たった100歳になられた際にお亡くなりになったそうです。

木村慧心先生の師匠、スワミ・ヨーゲシヴァラナンダ大師は12~13歳の頃、学校には行かずにお寺に行ってはスワミ(僧侶)の話が面白く、のめりこんでいったそうです。そこで、ヨーガを教えてほしいといったけれど、スワミ(僧侶)からはヨーガは知らないと言われ、母親からは、学校に行かずにお寺にばかり行っているので、よく叱られたそうです。
出家後は、導師を求めて聖地ハリドワール、リシケシをさまようがなかなか師となるような人に会えず、ヨーガのポーズは写真をみて見よう見まねでやってみるものの、呼吸法以上のことはわからない、そんな日々を過ごし、スワミ・ヨーゲシヴァラナンダ大師は、デリーに戻りサンスクリット語の文法を学び、ある時西ヒマラヤのカシミール地方のシュリナガルのある公園で、その文法書を読んでいたそうです。ただ、「ヨーガをならいたい、そして解脱したい一心で」。

しかしある時、君は何をしているの?と痩身の行者に声をかけられ、

サンスクリット語の勉強をしているというと、

「言葉を習ってヨーガができるようになるか?」

といわれ、はっとするのでした。その導師についてその後1ヶ月間で伝統的ヨーガの基礎を全て習ったそうです。

スワミ・ヨーゲシヴァラナンダ大師はその後、37年間先の導師が教えて下さった行法で一人、修業に修業をつむのですが解脱をすることはなく、聖地ハリドワールで開催されるクンバメーラというお祭りで、最後の師匠となる人と出会えるきっかけが出来たそうです。
そのきっかけを造ってくれた行者は、見かけは乞食のようなお坊さん。チベットの聖地ティルタプリからやってきている最高の導師様が今ならガンゴートリという場所にいるから、最高の教えを頂けるとおしえてもらうことになったそうです。村の僧侶から数えて三人目になるその聖地ティルタプリからの導師の智慧をいただき、その時の約束が、その悟りを3年3か月で自分のものにしたら、ヒマラヤから下界に降りて、一般の人に教えることというのが約束で、その約束をまもりヨーガの指導をされていたことで、木村慧心先生はスワミ・ヨーゲシヴァラナンダ大師から直接、伝統的なヨーガを学ぶことでできたそうです。

木村慧心先生の10代から大学、そしてインドへのお話は

はじめから大きな道が用意されていたのではなく
その時々の想いや考え、そして出会いを通して
自分の進みたい道を切り開いていく

とても興味溢れるお話でした。

日本ヨーガ療法学会というようにとても大きな組織を束ねておられる
今だけをみると、とても完成されたもののように感じますが
実は、ひとつ、ひとつが選択のくり返しで、<振り返るとそこに道があった>
という言葉がぴったり。今、ご自分の進む道に迷いや不安のある方も
おられるかもしれませんが、木村先生のお話は、とても勇気をいただくお話でした。
VOL2へ続く。

編集便り

本を読んでクロールを泳げるようになるか?

「本を読んでクロールを泳げるようになると思う?」
と木村慧心先生。
どんなに本を読んでも、泳ぎ方の理論を大学で学んでも
海に、川に、プールにと、水に入ってみなければ
決して泳げるようにならない

日常では、
当たり前のようなことも
本を読んだ、学校に行った、誰からから学んだ
というだけで、<できるようになった気の自分>
がいたりする。

行動あるのみ

そんなことを
改めて感じたお話でした。

尽きないお話、次号もお楽しみに!

木村慧心(けいしん)先生

(社)日本ヨーガ療法学会理事長
日本アーユルヴェーダ学会理事
日本ヨーガ・二ケタン代表
(社)日本統合医療学会理事
米子内観研究所所長 等役職多数

日本ヨーガ療法学会
http://yogatherapy.jp/
日本ヨーガ・二ケタン
http://yoganiketan.jp/